脊髄脊椎疾患

当院の特徴

当院の脳神経外科では脳だけでなく脊髄脊椎の治療まで行っております。脳神経外科というと脳の病気の治療を主に行うイメージがあると思いますが、脳と脊髄は直接繋がっており脊髄脊椎の治療は世界的に見ても脳神経外科が行うことがほとんどです。脊髄脊椎の病気には脊柱管狭窄症のような加齢性変化に伴うものや、骨折などの外傷疾患、脊髄腫瘍や脊髄血管奇形のような不運にも発症してしまった稀な疾患まで様々あります。その幅広い疾患を当院では全て治療が可能です。さらに当院の強みとしては、脊髄血管奇形疾患に対する直達手術だけでなく、血管内治療の経験が豊富な医師が所属している全国でも稀な施設です。患者様により良い治療の選択をすることを心がけております。

当院で扱っている主な脊髄脊椎疾患の一覧

【脊椎疾患】
・頚部(腰部)脊柱管狭窄症
・頚椎(腰椎)椎間板ヘルニア
・後縦靱帯骨化症
・黄色靱帯骨化症
・環軸椎亜脱臼
・脊椎圧迫骨折
・分離症
・すべり症
・感染性椎間板炎(椎体炎)
・Facet cyst

【脊髄疾患】
・脊髄腫瘍(上衣腫、神経鞘腫、髄膜腫、血管芽腫など)
・脊髄ヘルニア
・脊髄空洞症(先天性、2次性など)
・小児脊髄疾患(脊髄髄膜瘤など)
・癒着性くも膜炎(2次性、術後性、外傷性など)

【血管障害】
・脊髄血管奇形(AVM、AVF、dAVFなど)
・脊髄硬膜外血腫(外傷性、特発性など)

【その他】
・低髄圧症候群(脊髄硬膜損傷による)
・脊髄炎(ウイルス性、自己免疫疾患など)
・脊髄梗塞(特発性、血管障害など)

代表疾患に対する主な治療方法の紹介

【脊柱管狭窄症】
脊椎の中にある脊髄の通り道が狭くなり、脊髄症や神経根症をきたす疾患です。四肢の痺れ、疼痛、動かしづらさ、歩行障害、膀胱直腸障害などの症状を手術で改善させることができます。

(代表例①)

脊柱管狭窄症の治療法の代表例


頚部の脊柱管狭窄症に対して、首の後ろから手術する椎弓形成術を行なった症例です。脊柱管と呼ばれる脊髄が通るトンネルの屋根部分にあたる椎弓を縦割し観音開きで広げ、さらに新しい屋根の代わりとなる金属プレートを被せることによって脊柱管を広げます。

(代表例②)

脊柱管狭窄症の治療法の代表例


腰部の脊柱管狭窄症に対して、腰の後ろから手術する椎弓切除術を行なった症例です。脊柱管と呼ばれる脊髄が通るトンネルの屋根部分にあたる椎弓を切除(点線部分)することによって狭かった脊柱管を広げます。

(代表例③)

脊柱管狭窄症の治療法の代表例


腰部の脊柱管狭窄症に対して、腰の側方から徐圧し、後方から固定術(OLIF)した症例です。椎間板が摩耗していたり、不安定性がある症例、後方からの手術歴があり再手術症例に適した手術方法です。狭小化した椎間板にスペーサーを挿入(白線)する事により、脊柱管の高さを正常な状態に戻し3次元的に狭窄を改善させます。


【脊髄腫瘍】
脊髄腫瘍には硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、硬膜内髄内腫瘍と発生部位で大きく分けても3つのパートに分かれており、さらにそれぞれの場所に色んな種類の腫瘍が発生します。発生する部位によって症状もいろいろですが、代表的な症状としては麻痺、疼痛、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害などです。予後も良性腫瘍と悪性腫瘍で大きく異なります。

(代表例)

脊髄腫瘍の治療法の代表例


腰部の馬尾神経に発生した神経鞘腫の症例。脊髄腫瘍としては比較的多く割合を占める神経鞘腫は良性腫瘍であり、基本的には全摘出が可能で予後も良好です。この症例も坐骨神経痛と間欠跛行という馬尾障害の症状を呈していましたが、術後は改善し再発も認めておりません。


【脊髄血管奇形】
非常に稀な疾患であり、治療に難渋することも多い疾患です。治療経験が多い施設も稀ですが、当院は外科的治療、血管内治療ともに経験豊富なスタッフが揃っており患者様ごとに適切な治療を提案できます。

(代表例①)

脊髄血管奇形の治療法の代表例


硬膜動静脈瘻の症例です。脊髄血管奇形の中では最も多い疾患です。脊髄の静脈に動脈血流が直接流入する事により脊髄浮腫をきたし(赤矢印)、様々な神経症状が出ます。最近では血管内から治療することもありますが根治率は20%程度と非常に低く、基本的には高い確率で根治できる外科的治療を施します。当院では基本的には外科的治療を選択しますが、高齢者や外科的治療が困難な症例では血管内治療を検討することもあります。手術では動脈から静脈に直接流入する部位(緑矢印)を焼灼離断します。術直後に脊髄浮腫は改善し、造影CT検査で描出の認めた異常血管影(青矢印)は術後に消失しました。

(代表例②)

脊髄腫瘍の治療法の代表例


頚部にできた血管奇形の症例です。当初脊髄腫瘍という話で紹介された症例でしたが、巨大な血管奇形でした(赤矢印)。椎骨動脈と脊柱管内の静脈に異常なシャントが原因で巨大な静脈瘤を呈し、それが脊髄を圧迫し神経症状を来していました。この症例はもともと神経繊維腫症1型という遺伝子疾患の既往があったのですが、まれに頚椎や頚椎周囲の血管に奇形を呈することがあります。このような症例は外科的治療は危険性が非常に高く、血管内治療で治療しました。なお、この症例は環軸椎亜脱臼も呈しており今後時期を診て脊椎手術も行う予定です。


*これらの代表症例に使用したすべてのデータは患者様から許可を頂きご提供いただいたものです。ご協力いただいた患者様方にはこの場を借りて御礼申しあげます。

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